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シーラカンスは深淵をゆく

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職人さんと芸術家

北海道のお見上げの一つに木彫りのヒグマが有名だった。僕の家にもテレビの上にずっと飾られていた。あの木彫りの熊は躍動感に満ちていて素晴らしい作品のように見えた。でもあの熊は芸術品ではなく民芸品なのだ。

色々なところで色々な土産物が売られている。昔ながらの製法を守って、手作りの温もりを伝えてくれている。土産物に限らず人の手で一つ一つ仕上げられていく工芸品がある。見事な仕上がりに職人技を垣間見るのだ。

そう、民芸品や工芸品を作るのは職人さんだ。

僕の友達は「自分たちは職人でなければいけない」とよく言っていた。決められたことをキチッと遂行してく。当たり前なことを当たり前にやった上で自分なりのアイデアを盛り込んでいくべきだと。でないと独りよがりの自己満足だけで終わってしまう。自己満足で終わっていいのはアマチュアだけだ。これはどの職業にだって当てはまることだ。


でも、腕のいい職人さん達が作り上げた物は芸術的だと言われても芸術品だとは言われない。なぜなんだろう。芸術家と職人さんには違いがあるからなんだろうか。

職人さんは高度な技術を持ち、決まった物を高い水準で作り続ける。カタカナで言えば「マスター」と呼ばれたり「プロフェッサー」と呼ばれたりする。ある意味、失敗は許されない世界で生きている。つまり技術や技能を身につけて、それで稼いいくのだ。

芸術家はどうかと言うと無数の試行錯誤を繰り返しながら創造的なことをしていかなければならない。というよりも、決められたことに飽き足らず模索し続けなければならない性分を持っている人だ。1つの作品を作り上げても決して満足することなく探求し続ける。もしかすると極貧生活を送らなければならないことだってあるし、名声を得られたとしても一生満足を得られないかも知れない。

芸術家と職人さんの違いは、科学者と技術者の関係と似ている。科学者は新しい理論や方法を探求し続ける。技術者は積み重ねてきた技術によって正確かつ安全に目的に向かって遂行する。

つまり芸術家と科学者は探求することで活路を見出し、職人さんと技術者は知識と技能を積み上げて事を成す。

もちろんその中間に位置する人だっているかも知れない。例えば料理人さんは技能を習得しつつも新しい料理を生み出す両面を持ち合わせている。

では、自分はどうか。自分は写真を撮るけれど、それは技能のみに頼って他の人と同じような写真を撮り続けているのなら職人さんの範疇だ。でも、自然界や人間社会、さらには自分の内面を探求し創造的な作品を撮ることが出来たなら芸術家と呼ばれるようになるかも知れない。


余談と言うか、このことについて考えている時に「アーティスト(芸術家)」って何か調べてみた。「アーティスト(芸術家)」って元々は1つのジャンルではなく複数のジャンルで創造的な活動をした人のことを指して用いるらしい。絵画だけならば「画家」であるけれど、版画も行えば「アーティスト(芸術家)」となる。だから僕の場合だったら「写真家」になれるかどうかだ。それから音楽関係で「アーティスト」と用いるのは「パフォーミック(?) アーティスト」の略、つまり「実演家」という意味で用いているようだ。
by musapoo-world | 2013-06-30 21:54 | 写真について

1987年に始まった「シーラカンス通信」の流れを汲み、自分を見詰め、自分の道を模索する、自己療養のささやかな試みだから、月に一度程度のものぐさブログ。


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