人気ブログランキング | 話題のタグを見る

シーラカンスは深淵をゆく

windsongs.exblog.jp ブログトップ

色の表現力

 前回の色の話の続きをする。とりとめもなく書き進んだので自分でも分かりにくいので、前回の疑問を整理してから始める。

疑問1
 絵画の世界では、パレットに「赤」「黄」「青」を出しておけばすべての色が作られると考えられていた。僕もそう教わった。でも、プリンターのインクはそうなっていない。特に黒と三色で印刷する機種のほとんどが「C(シアン)」「M(マゼンタ)」「Y(イエロー)」を使っている。それはなぜなのか。

 ★現在、色の三原色は「C(シアン)」「M(マゼンタ)」「Y(イエロー)」となっている。
 ★「赤」「黄」「青」では表現できない色の存在がわかり、基本的な考え方が変わった。

色の表現力_d0108395_14314038.jpg


疑問2
 色は「赤」「黄」「青」なのに、光の3原色は「赤」「緑」「青」。なぜ「黄」と「緑」が食い違っているのか。

 ★「赤」「黄」「青」の三原色の考え方が変わってRGBCMY6色が均等に配置される考え方になった。

色の表現力_d0108395_14321579.jpg


色の表現力_d0108395_14323660.jpg



疑問3
 色の三原色の「赤」「黄」「青」の間には、「赤」「橙」「黄」「緑」「青」と、「橙」と「緑」が入る。光の三原色の「赤」「緑」「青」の間には「赤」「橙」「黄」「緑」「赤」と「緑」の間が広く、「緑」と「青」間隔がとても狭いのはなぜか。

 ★「赤」「黄」「青」の三原色の考え方が変わって、新しい色の考え方が使われている。


疑問4
 単純に「M(紫)」を感じることもできるのに、なぜ「赤(R)」と「青(B)」を混ぜると「M(紫)」になるんだろう。紫外線と言われるぐらいだから「M(紫)」まで見えるとして、その波長は380nm(ナノメートル)ぐらいまで。それなのに620nmぐらいの「R(赤)」と450nmぐらいの「B(青)」を混ぜると光も色も「M(紫)」に感じる。それってどうしてなんだろう。



疑問5
 僕が持っているライトの中に、白色と赤色と青色の光を切り替えられるものがある。赤色と青色はルーメン(光の量)で言えば同じ明るさなのに、実際に使ってみると赤色が青色に比べて暗く見えるのだ。

 ★色覚細胞が反応する領域によるのではないかという考え。



疑問6
 「赤」「黄」「青」と並べた時、「赤」や「青」に比べて「黄」がすごく明るく感じてしまうことだ。

 ★この3原色は昔の考え方である点。
 ★モニターのRGBでみると、「黄」はR255・G255・B0で合計510と光の出力が高い。



疑問7
 従来では「R(赤)」から「Y(黄)」までの間が広かったが、新しい物では狭くなっている。代わりに「G(緑)」の周辺が広がっている。「RGB」と「CMY」の間隔を同じようにしたのだけど、なぜ光の研究が進んだ結果「G(緑)」の周辺が広がったのか、本来の色の感じ方とどう関わっているのか分からなくなった。



 従来の考え方から新しい考え方に変わったことで、僕の疑問のほとんどが解決されてしまっている。色の間隔(距離感)や明暗のバランスの悪さが気になっていたけれど、現在の考え方ならばすっきりする。

 でも、疑問4と疑問7は解決されずに残っている。赤と青を混ぜるとなぜ紫になるのか。なぜ緑周辺の領域が広がったのか。


 まず、紫の疑問について自分の予想を考えた。ただし、それについて確かめる方法を僕は持っていないので、あくまでも予想だ。戯言といっていい。

 三色の色覚細胞の反応する波長を示した図をwikipediaから拝借して説明。

色の表現力_d0108395_14333656.jpg


 赤を認識する色覚細胞は、青領域から紫に入るところで感度が上がっている。波長の短い紫外線に近い紫の光に青を認識する色覚細胞と赤を認識する色覚細胞が反応するから、波長の長い赤外線に近い赤色に連続してつながっているように見える。
 どうだろう。眼科または脳外科の大学でしか実験できない話なので、僕がネット上で一番信頼するデータを元に仮説を立ててみた。でも、世の中には色々な人がいて、遺伝子の型によって紫外線領域を認識する色覚細胞をもっている人がいるらしい。その人には紫がどう見えているのだろうか。紫と感じる波長が違うのだろうか。


 次に、緑の周辺の領域が広がって、モニター上ではあまり変わらないように見えることについてだ。

 現在の6色の配置図はこうなっている。RGBCMYを均等に配置することによって緑周辺が広がった。


 考えられることとしていくつかのことが上げられる。
1)僕の目の緑周辺の色の分解能力が低い。
2)僕のMacのモニターの調整がうまくいっていない。
3)色のサンプルがよくない。
4)緑周辺には微妙な色の違いがあって、技術的に追いつかない。

 まず、僕の目がどうのこうのと言うのは置いておく。それが原因だとすべてが説明できなくなってしまう。モニターについてもいくつかの設定を試したけれどあまり変わることはなかった。色のサンプルについてはもう一度作り直すところからやってみた。

 使用ソフトはアドビのイラストレーター。データ形式のRGBとCMYK両方で作った。

RGB形式のサンプル。RGBの色は赤緑青、それぞれ色255段階で表現される。

色の表現力_d0108395_14343271.png


RGB形式で作った物をCMYK形式に変換したサンプル。

色の表現力_d0108395_14353926.png



CMYK形式のサンプル。CMYKの色はシアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色で、それぞれ100%を最高に設定できる。Kの黒については、CMYがすべて0%だと黒になることから、考えから除外している。

色の表現力_d0108395_1436256.png



 数値としてきっちり彩色したけれど、やっぱり緑の付近はパッと見、区別しにくい。

 これまでRGBとCMYKの2種類について触れてきたけれど、RGBと呼んでいたのはモニターなどを基準に作られたsRGBという規格だ。それに対して同じ加法混色でもアドビシステム社が提唱しているsのつかないRGB規格が存在する。

色の表現力_d0108395_14371818.jpg


 黒線がsRGB、白線がCMYK。
 図でも分かるように、sRGBとCMYKの色の表現力は結構狭いのだ。アドビ社のRGBは二つよりもずっと広い。それも緑の領域がめちゃくちゃ広がっている。みんな同じ色に見えるぐらいだ。でも自然の色合いってとても広いのだ。モニターで見るだけならばsRGB形式で充分だと思う。でも、写真を撮る者にとっては問題が起こってくる。色の階調が狭くなればざらざらしたような表現になってしまう。微妙な色彩の変化を失わせてしまう。そこでアドビ社の写真のソフトPhotoshopを始めとして多くの写真関係のソフトには、保存形式としてRGBとsRGB、CMYKなど複数の形式から選択することができるようになっている。

 ではなぜ緑の領域が広いのか。
 これも予想でしかないけれど、森や林でくらしていた僕たちの祖先は、緑色の微妙な色合いの違いを見分けることができた方が生き残る可能性が高かったからだと思う。つまり葉っぱの色だ。実際に林に行くと、ひとくくりで緑と言ってしまうけれど、ものすごくたくさんの緑色が存在している。そのどの色の葉っぱが食べられるのか、食べてはいけないのか、それを見極める能力が必要だったと思う。

 結局、モニターの色の再現能力がまだ充分ではないからなんだと思う。ただ、モニターで写真を見る機会が圧倒的に多くなってしまった現代では、そんな緑色の微妙な違いなど関係ないのかもしれない。モニターの狭い色空間で充分なのかもしれない。でも、本来人間が持っている違いを見分ける能力を使わずにモニターに慣れてしまったら、なにか味気ないような気がする。プリンターで印刷したのではなく、印画紙に焼き出された色の豊かさを味わってきた者としては淋しい気がする。

 現在、カメラの社会でも、色鮮やかな表現ができる機種がもてはやされている。見栄えが良いからだ。「鮮やか」というのは原色に近い色が強調されてメリハリのあるってことだ。つまり中間の微妙な色彩はかえって邪魔な存在になる。こうした流れはモニターで見ている生活が当たり前になってしまったからなんだと勝手に思っている。
by musapoo-world | 2011-09-08 22:30 | 無知の空騒ぎ

1987年に始まった「シーラカンス通信」の流れを汲み、自分を見詰め、自分の道を模索する、自己療養のささやかな試みだから、月に一度程度のものぐさブログ。


by Musapoo
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite